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小説 一般公開 読了目安 8分

連載小説「雨の図書館」

第十二章

窓辺に残された手紙

著者 水城 文

雨は、朝から途切れることなく降り続いていた。図書館の高い窓を細い雫が伝い、古い街並みをぼんやりと滲ませている。

澪は返却台の本を一冊ずつ棚へ戻しながら、昨夜見つけた封筒のことを考えていた。宛名はなく、ただ表に小さな文字で「南の窓辺へ」と記されていた。

南閲覧室は、建物のいちばん奥にある。午後になると淡い光が差し込み、机の傷や紙の繊維まで静かに浮かび上がる場所だった。

高い書棚が並ぶ静かな古い図書館の内部
雨の日の南閲覧室。午後には窓から柔らかな光が差し込む。

窓辺には、昨日までなかった木箱が置かれていた。蓋の隙間から、生成り色の紙が覗いている。澪がそっと開くと、中には同じ筆跡で書かれた手紙が十二通、古い紐で束ねられていた。

一通目の日付は、ちょうど三十年前の今日だった。差出人の名前を見た瞬間、澪は息を止めた。それは、この図書館の記録から消えた司書の名だった。

手紙に記された場所については、作者ノート「旧館の南窓を訪ねて」でも紹介しています。

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ブログ 一般公開 取材ノート

旧館の南窓を訪ねて

物語の舞台になった窓辺と、雨の日に見える街の輪郭について。

水城 文

南窓の場面を書く前に、雨の日の旧館を訪ねました。曇った窓硝子を通る光は思ったより明るく、机に置いた紙の端だけを静かに照らしていました。